佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
7
「恋人ごっこ⁈」
「そう、それなら、しおりも気が楽だろ。俺を知ってほしいんだ。深く考えないで、流されて
よ。恋人ごっこから始めよう」
ここまで思ってくれる零士の真剣な表情を前に、心が揺れる。
「…わかった。重いって思ったら、すぐに言ってね」
「思うわけないだろ。きっと、俺の方が重いわ」
しおりに、変なトラウマを与えた男を苦々しく思う零士だった。
そう思っているとは思わないしおりは、東雲がわざとしおりの気持ちを軽くする為に、自分の方が重いと言ってくれてると思っているのだ。
実際、本気で恋を知った零士の気持ちは重いのだが…今は、しおりは知る由もない。
車を降りた瞬間から、恋人ごっこが始まるらしく、手を繋いでくる東雲を見上げた。
「ダメ?」
「ダメじゃないけど…」
「けど?」
「恋人ごっこって、どこからどこまでかなって思って」
「普通にイチャイチャしたいし、できたら、キスまではしたい。ダメか?」
しゅんと悲しそうにするイケメンの表情は、ほんと、卑怯だと思うしおり。
「そんな顔して、ダメかなんてずるい。ダメって言えないじゃない」
「マジ、いいの?」
嬉しそうに頬を綻ばせる東雲に、キスぐらいと軽く思っていたことを、後々、後悔するしおりだった。