佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
エレベーターに乗ると、2人きりをいいことに、東雲は、しおりの唇に軽くキスしてきた。
思わず押しかえすしおりの顔は真っ赤だ。
「東雲さん、ちょっと、手が早すぎ」
「キスしていいんだろう」
ニヤリと笑う東雲に、しおりは言葉を詰まらせる。
嫌じゃないと、思っているからだ。
手を繋ぎ、そのまま3階に着き、共有廊下を歩いていく。
しおりが部屋の鍵を開けると、東雲は、すねだす。
「なぁ、いつまでおれ、東雲さんなの?恋人なのに…」
「恋人ごっこだからね。東雲さんじゃいや?」
「いやだね。零士って呼んでくれたら、この手を離してあげる」
「呼ばなかったら?」
「呼ぶまで、ここでキスするとか…」
「零士、今日はありがとう」
「その投げやり感が、引っかかるけど、まぁ、いいや。じゃあ、もう一つ」
「まだあるの?」
「あるよ。恋人なのに、お互いの連絡先交換してない」
「もう、ごっこだからね。拗ねないで、携帯出して」
SNSのアプリを使って交換すると、嬉しそうに笑うのだが、突然、独占欲という嫉妬を出してくる。
「前の男の連絡先消したよな⁈消してないなら、今すぐ消して」
必死な形相で、グイグイとくる零士。