佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
部屋の奥を見つめ、玄関先で唇を尖らせているイケメン。
「…ここはちょっと、いやかな」
「えっ」
「だってさ、ここにいると嫉妬でおかしくなりそうだよ。だからさ、俺んとこ、おいで」
あー、そうかと、しおりらしく、配慮が足りなかったと反省するのだ。
「わかった。ご飯食べた?」
「まだ」
「何か作ろうか?よかったらだけど」
「マジ、嬉しい。あっ、でも俺の冷蔵庫、酒しかないかも」
「もう、何食べて生活してるの?材料見繕ってくるから、先に行ってて」
「わかった。待ってるな」
顔を綻ばせ、出ていく零士を可愛い奴と思うあたり、しおりは、もう、零士に気持ちが傾きだしているのだろう。
腰に手を当てて、「さて、何作るかな?」考えて冷蔵庫へ向かうのだ。
しばらくして、零士の部屋のドアチャイムが鳴る。
ガチャリとドアを開ける零士は、苦笑する。
「勝手に入ってくればいいのに、そういうとこ、真面目というか、しおりぽいよな」
「普通のことでしょ?」
「いや、そうじゃない女もいる」
遠い目をする零士は、彼の周りにいる女達のあれこれの常識はずれを思いだすのだ。
だから、引越しし、今の住まいは、どの女も知らないはずなのだが…