佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
しおりをストーカーと間違えた頃に後をつけられていたのは、確実だった。
だが、お見合い話が出だした頃に気配が消えたことで、興信所にでも身辺を探らせていた誰かがいたのだろうと、今は思っているが、用心に越したことはない。
ごっことはいえ、しおりと恋人になれた今、誰にも邪魔されたくはないのだ。
だが、すでに見合いは決まっている。自分でなくても祖父の孫には、零士と同年代が何人もいるというのに、向こうから名指しされたのが気にいらない。
祖父の顔を立てなければならない人物の孫との見合いだからか、顔合わせぐらいは行かなければならないのも、腹立たしいのだ。
こんなに早く、しおりとの関係が進むとわかっていたら、最初から見合いなど断っていたと、自分の読みの甘さを嘆くのだが、今は、しおりとの時間を過ごすことが大切で、余計な思考を脳裏から排除する。
「入って」
「お邪魔します…、散らかってるね」
「これでも、急いで片付けたんだけど…手伝ってくれると嬉しいな」
「私が、手伝ってもいいの?」
「手伝ってくれると嬉しいけど」
「いいの?前に、ほら、勘違いさせることはさせないって言ってたじゃない」
「それは、ほら、あれだよ。彼女でもない女に、彼女面されるのがいやだからで、しおりは、俺の彼女でしょ⁈」