佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
背後から、抱きしめてくる零士にドキリとさせられる。
「私も、毎日作らないし、簡単なものしか作れないからね」
「しおりが作ってくれるなら、なんでもいい」
甘くなる雰囲気を消すように、照れたしおりは、お腹にある零士の手をつねる。
「片付けは?」
「まだ、途中」
「片付けて」
「わかったよ」
渋々とした口調で、手を離す零士の温もりが消えて、少し寂しいと感じたのだが、気合いを入れる為に、腕につけていたシュシュで髪を纏めた。
ゴミを一つの袋にまとめて、流しの中にある皿などを洗い終えたら、料理に取りかかる。
クリスマスとはいえ、冷蔵庫にあった食材で作れるものは限られていて…
スパニッシュオムレツとクラッカーの上にポテトサラダを添えて、缶詰のミートソースのペンネだ。
これでも、頑張ったと思う。
脚の低いテーブルに並んだ料理に、零士は、声をあげて喜んで、床にあぐらをかいて座った。
「うわっ、凄いな。この短時間で3品もできるものなのか?作ってくれてありがとう」
1時間は待たせたはずだが、嬉しそうにしてくれるので、頑張ってよかったと思う。
「たいして手間暇かけてないよ。味の保証はしないからね」
しおりの腕前では、味付けも限られたものでしかできない。