佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
辰巳も、こんな気持ちでいたのだろうと、ストンと納得するのだ。
暮れに向けてそれぞれに忙しかった2人は、やっと、明日から4日間の休みに入る。
「明日の大晦日の夕方に宿に着く予定だっけ?」
「その予定。2日の昼までゆっくり過ごせる」
しおりの手を取り、指を絡めてくる零士。
この数日で、これくらいの接触に慣らされてしまったしおりは、違和感なく受け入れている。
「部屋、どうする?」
甘えたように、しおりの肩に顎を乗せる零士は、期待していなかった。
「どうするって?加賀さんと香織は一緒でしょ。一応、私達もごっことはいえ、恋人だし…一緒の部屋でいいよ」
「えっ、マジで」
恥ずかしがっているしおりを、ギュッと抱きしめていた。
「嫌なことしないって約束、忘れないでよ」
「…しおりが嫌がることは、しない」
怪しい口調で、視線を逸らす零士を憎めないのだ。
隣の部屋にもう、一組のカップルもいるので、そんなことはしてこないと思っているしおりだが、そこは抜け目のない男達。
「今日、このまま泊まってけよ」
疑わしげに零士を見るしおり。
「いたずらもしない。キスはするけど…一緒に寝るだけ。しおりの温もり知ったら、布団での独寝、寂しいんだよ」
「こどもか?」
「いいじゃんか。俺の腕枕は特別だぞ」