佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
湯だったような顔になったしおりは、『物欲しそうにしていないし』と言おうとしたのだが、体を起こした零士が、「ツラ…」と、苦笑して息を大きく吐く姿を見てしまった。
しおりだってウブじゃないので、零士がいま、男としてどういう状況なのかわかっている。
上に乗ってきた際に、太ももに感じた熱い熱は、よく聞く、男の朝に起こる現象だろう。
「はあっ、ちょっとシャワーしてくる。しおりは、どうする?一緒に入る?」
「入るわけないでしょ。バカ。一旦帰るわよ」
「だな、なら、3時頃迎えに行くまで別だな。寂しくて泣くなよ」
「泣かないわよ」
茶化し終えた零士は、クスリと笑い、浴室へ向かった。
子供みたいにわがままになったり、かっこいいはずなのに、かっこよく見えない零士。
「はぁ…どうしよう」
大きなため息と呟きは、零士に惹かれていることをものがったいるのだが、しおりにとって、恋とは思うばかりの切ない恋しかしてこなかった。
だから、思われる恋に躊躇っている。
つい、数日前まで、わからないと思っていたのに、数日での心の変化に自分自身戸惑って、冷静になろうと自分の部屋に帰ることにした。
「零士、戻るね」
「…了解」
浴室のドア越しでの挨拶をして、戻っていった。