佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

聖人君子などではない零士は、しおりが流されているうちに、心も体も手に入れようと企てているとは、しおりは知ることもなく深い眠りについていた。

数時間前に目覚めたしおりは、頭痛を我慢しながら、昨夜の記憶辿った。

そして、思い出して悶絶するのだ。

記憶に残っているのが恥ずかしい内容に、零士の顔をまともに見れていない状況が現在である。
香織達は、朝、顔を見ることもなく近くの神社へ初詣に向かったようだ。

別行動となる事実を零士から聞き、即座に香織にメールを送ったら、『デートしてきます。しおりさんは、零士さんと向き合ってくださいね』と、返ってきたのだ。

向き合うも何もケンカしたわけではないので、キスができるなら、その先に進めと言うことなのだろう。

恋人ごっこという形に甘えている状況が、零士に我慢をさせていることはわかっている。

昨夜のキスでも昂る熱をおさえて、甘い吐息を吐き、唇を甘く喰むまでに留めてくれていた。

そして、今も、昨夜のことに触れず、ただ、手を繋いで温泉街を歩いている。

たくさんの食事処と土産処があり、あちこちの温泉宿に宿泊している人々で賑わって、すれ違うのも大変なほど。
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