佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

苦しそうに感情を露わにする零士を見つめるのだ。

零士は辛そうに苦笑する。

「悪い、嫌なことしないって言ったのにな。頭冷やすか。ちょっと待ってて」

しおりに背を向けて、腰に両手を当てて大きな息を吐く零士の背中は哀愁漂い、零士の舐め上げた指先が疼き、しおりの心を締めつけるのだった。

背を向けている零士の狙い通りなのかは、本人しかわからない。

ただ、零士の心中は腹黒く、しおりを本気で堕とす為なら、情も手段に使うのだ。

しばらくして、零士はいつも通りに振る舞い、手を繋いできた。

「小腹刺激されて、お腹空いてきたな。しおりは?」

「そうだね」

そう言いつつ、饅頭を食べきるのだ。

「何食べる?」

もうすぐお昼時だからか、どの店も混んでいるようで、出口前に人が並んで待っている店がいくつもある。

だが、待つことも楽しみのひとつなので、苦にならないしおりは、一番観光客に人気のお店を指差した。

「お好み焼きか」

「うん」

にこりと笑うしおりの笑顔に、零士は笑う。

「ほんと、お前のそういうとこだよな」

向かいには、おしゃれなカフェがあるというのに、お好み焼き屋を選ぶしおりの味覚の同じさが、しおりを思う零士の思いが増し、彼女を欲する気持ちが高まるのだ。
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