佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「なに?」
「いや、俺もお好み焼きは好きだよ。食の好みが合うなら、あっちも相性いいっていうからな。楽しみだ」
「はぁ⁈な、なに言ってるの、ここ人前」
ワタワタと周りを気にするしおりだが、誰も2人の会話に聞き耳をたてていない様子にホッとするのだ。
「なにか勘違いしてないか?恋人になる相性だぞ。後でそこの店で相性占いでもしてもらうか?」
ニヤリと笑う零士に揶揄われたのだとわかったしおりは、勘違いに顔を赤らめ、零士の腕をつねるのだった。
まぁ、零士の本心は、しおりの想像通りで、意識させるには十分だったとほくそ笑む零士だ。
「寒くないか?もっとくっついてろよ」
1時間近く並んで待つ間も、零士は風上に立ち風避けになってくれる優しさに、しおりの心は大きく揺れていく。
(どうしよう…もう、ごまかせないよ)
揶揄ってくる意地悪な面もあるけど
優しさだったり
愛しい眼差しだったり
こそばゆい甘い触れ合いだったり
好きだと言う気持ちをぶつけてくれる。
辰巳がくれなかったものを、零士は、当たり前のようにくれる。そして、しおりもそんな零士に惹かれている。
簡単に気持ちは変わらない…
そう思っていたのに…
いや、恋人ごっこを始める前から惹かれていた。