佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

だから、零士の提案に頷いたのだ。

前の恋の傷はまだ心の奥に残っていて、恋した人に重いと言われ振られた言葉がなかなか消えないしおりは、零士との先を躊躇っていた。

しおり達の順番が来て、熱々のお好み焼きを堪能し、宿に帰ろうとした2人の前に女性達が群がってきた。

「やっぱり、東雲さんだ」

「わー、こんなところで会うなんて偶然ですね」

「どこに泊まっているんですか?」

1人はしおりと反対側の零士の腕に抱きついて甘えた声を出していた。そして、連れの女性達が目をキラキラさせて話しかけている。

零士と手を繋いでいるしおりがいるにも関わらずだ。

しおりの心に嫉妬というものがおきていた。

反対側から敵意を向けてくる辺り、零士に気持ちがあるのだろうと推察していた。

「あのさ、見てわからない?邪魔しないでくれないかな」

しおりに向ける優しい一面とは違い、最初に出会った時に見せたような冷ややかな表情と声で、腕を振り払っていた。

「あら」

零士に腕を振り払われても、鋭い視線を向けられてもにこやかに笑う女性。

「遊びはそろそろやめてくださいね」

「はあ?誰に言ってる?俺の彼女を侮辱するなら、俺もいろいろと考えるけど」
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