今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
「躍らせる?」
「ええ、きっとジェイド先生ってすごくダンス上手だと思うから、ヘレナはジェイド先生を信じていれば大丈夫!きっと上手に躍らせてくれるわ!」
「そんな……人任せなんて。私のせいでジェイド先生が恥をかいたらと思うと、パーティなんて出ない方がいいんじゃ……」
責任感が強くて、可愛くて、頑張り屋さんなヒロインの王道を行くヘレナが半べそかいていたなら、可愛くて額に飾りたくなるのが人情である。
アンがヘレナの頭をなでなでしていると、ダンスホールのドアを開けて突然ミカエルが入ってきた。
何の挨拶もなく、ヘレナなどいないかのようにアンに声を届ける。
「アン、食事に行くぞ」
「ミカエル、帰ってたの?」
「さっきな」
ミカエルはアンがいるところになぜか突如として現れるのが得意である。まるでいつでも居場所がわかっているかのようだ。