今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
魔法生物討伐で功績を収めて帰ると誰も彼がミカエルを称えてギャアギャア騒いだ。
だが、アンだけは通常運転でミカエルは口端が上がる。アンのミカエルを特別扱いし過ぎないところが好きだ。
手を引っ張られてずるずるダンスホールの出口に引きずられていくアンはポンと手を打って、名案を思いついた。
「じゃ、じゃあお願い聞いてくれたら、ほっぺたにキスしてあげる!」
ミカエルの足がピタッと止まって、ぐるんと振り返り、アンを見下ろした碧眼が光をキラキラと携えて笑った。
「聞こうか」
「そういうところ、それでいいのかなミカエル」
「アンが俺にとっての自分の価値を見誤ってないところが、俺は好きだ」
アン限定ではあるが、アン自身で釣ればわりとあっさり用件が通るミカエルはある意味ちょろい。
だが、アンはヘレナのためにミカエルの力が必要だった。こいつは何でもできるのだ。
「ミカエル、ヘレナと一曲踊ってくれない?」