今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
アンの正面には、なぜか白髪碧眼が美しい王太子ミカエルが悠々と座っていた。
窓から入る日光で輝く碧眼には魅惑の力が満ちている。
(ミカエル殿下、顔は天才)
推しではないが、彼の顔の天才加減はアンも客観的事実として認めている。
まだ10歳であるが、美の塊だ。これがこのまましっかり大人になるのだから、美貌ガチャ勝ち組は人生余裕だ。
(でも図々しい、常に上から、勝手、まことに好かん)
あの事件後、アンの部屋には毎日ミカエルがやってきていた。何をするわけでもなく、療養中のアンの側で本を読んでお茶を飲んで、偉そうに「早く治せ」と無茶を言っては勝手に帰っていく。
今日も今日とてアンの部屋ではミカエルがくつろいでいた。
「お前の部屋に俺がいて何がおかしい?」
すっかり体調は戻り、右半面の顔が醜く焼け爛れたアンは、真正面で絵画のように美しくお茶を嗜むミカエルを指さした。
「いやよく考えて、おかしいでしょ?!」
「ハハッ!アンはいつも面白いな。俺に偉そうに言うのは父とお前くらいだ」