今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
パートナーと共に登場しなかったミカエルはフリーであるとの情報がパーティ会場に流れた。
階段を下りたミカエルの周りに、我れ先にと令嬢たちが集まった。
その中で、公爵令嬢リリアが真っ先に声を上げた。周りの令嬢たちも彼女の格式には敵わないとぐっと口を噤む。
「ミカエル殿下!よろしければ私と踊っていただけませんか?」
通常であれば、身分が上の者から下の者にしか声はかけない。
だが、聖なる夜のダンスパーティーだけは例外で、誰からでも交流して良いことになっている。
王太子と一夜でも共にできれば既成事実をもとにのし上がれると、勇み立つ令嬢たちは色めき立っていた。
「…………」
ミカエルはリリア嬢を無視した。
リリア嬢は聞こえなかったかなともう一度前に出た。
「殿下?」
「無視したんだから、気づけよ」