今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─

アンはミカエルと今後一切関わり会いたくなかったのに、王太子殿下のご命令【俺だ、部屋に入れろ】は断ることもできない。階級社会の辛いところである。


アンはミカエルに嫌われたら嫌われるだけ好都合なので、全く媚びず無礼を働き、敬語だって使わない。



「帰って、迷惑、顔も見たくない。あなたの顔は私の趣味じゃない」

「顔をコケにされるのは生まれて初めてだ。お前はいつも俺に初めてをくれるな」



歯に衣着せずに適当に話して、この失礼な女め!と罵られることを期待していたのだが、ミカエルは面白がるだけだった。



「でも実はかっこいいと思ってるだろ?照れて可愛い奴め」

「全く怯まない自己肯定感の高さすごい」

「ほら、俺を好きになった」

「『すごい』を『好き』って言った!に変換されるの怖すぎるんですけど?!」



アンは毎日繰り返される「アンは俺を好き」俺様発言の堂々巡りのやり取りにため息をついた。

ミカエルとの婚約が嫌で顔を焼いたことなど忘れてしまったようだ。王太子は都合がよい頭をしておられる。


アンが何度手厳しく追い返してもミカエルは美貌が光る顔を少年らしく輝かせて、楽しそうに笑うだけだった。



(なんか可愛い顔して屈託なく笑われると、毒気抜かれるんだよね……)

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