今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
ミカエル殿下は立派なお子様であるが、こちとら中身は三十路過ぎたオタクである。無邪気に笑う美少年に心絆されてしまいそうになる。
だが、悪役令嬢アンを断罪死刑にするのは成長したこの男だ。気は抜けない。
「アン、今日は治癒師が来るぞ」
「また?」
「俺はあきらめない」
アンの醜い右頬をするすると優しく撫でてミカエルは、にこっと美貌を見せつける。いちいち美貌が光り続ける少年は、本当にあきらめない男だった。
「アン嬢、よろしくお願いいたします」
「ご足労ありがとうございます」
アンの部屋にもう何十人目になるだろう治癒師がやってきた。
(治癒師が来るならいっそ私の推し、ジェイド先生を連れて来て欲しい)