今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
つい先日想いを伝え合った恋人の出迎えとしてはとても派手な趣向でミカエルはクスクス笑った。
「何笑ってんのよ!」
「いや、俺のアンは可愛いなと思って。で?何が気に入らないんだ?」
「うるさい、帰って」
どかんどかん火の玉を打ち込んで、アンがミカエルをキャンキャン威嚇する。
だが、ミカエルは全く怯んでくれなかった。
火の玉あられの中を歩いてアンが座るベッドまでやってきたミカエルがニコリと楽し気に笑ってアンを見下ろした。
「どうした?」
「自分の胸に聞いて。これは最後通告。帰って」
「お前、それで俺が帰ると思う?」
片眉を高く上げて悪戯の気持ちを示すミカエルを、紅の猫目がギッと睨みつける。
アンだってミカエルと何年の付き合いだと思っているのか、こんなことでミカエルが帰るわけないと知っていた。
アンの本気はここからだ。