今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─


アンは立ち上がって、ミカエルの右頬をパチンと叩いた。


「ミカエルなんて、大嫌い」


アンの気が収まるならとあえて平手を受けたミカエルだが、その言葉だけは癇に障った。


「おい、お前言葉選べよ?」

「さよなら。私、ミカエルの思い通りになんて絶対にならないから」


キャンキャンする子猫のアンは可愛いが、爪が鋭すぎてミカエルのこめかみもヒクついた。


ミカエルがアンに触れようと手を伸ばすと、アンがすっと消えてしまった。


「俺に透明魔法なんかきくと思うか」


ミカエルが透明魔法を解除しようと指を振るうが、アンは見えなかった。


これはただの透明魔法ではない。


「アン?おい、アン!くっそ、また呪い魔法かよ?!」


ミカエルはぼろぼろに焼けた部屋の中を歩き回って、手あたり次第に透明魔法の解除をかけた。


いつも腰から下げている懐中時計も開いて、アンにつけた指輪の目印を探ってみたが、機能しない。


「こらアン!話をしろ!出てこい!」


アンの気配が全て消えて、アンの消息がつかめなくなってしまったミカエルは怒鳴った。


「呪い魔法は調べるのに時間がかかるんだよ!」


アンはまた自らに呪い魔法をかけた。



ミカエルからだけ、見えなくなる呪い魔法だ。

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