今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─


図書室に走って借りてきた呪い魔法の本から即席の呪い魔法だ。


簡易なものだが、それでも呪い魔法の特定と解析には、どんな優秀な魔法使いだとしてもどうしても時間がかかる。


アンはどんどん自分に呪いをかけていく。


断罪死刑ルート回避のため、ミカエルの思い通りにならないため、生き抜くためだ。



でも呪いは息苦しくて、思いきりミカエルを好きになれないのは悲しくて、ミカエルに裏切られたのは痛くて、アンはミカエルの目の前で膝を抱えて泣いていた。


ミカエルは家中に解除魔法をかけてアンを探して朝方まで騒いでいた。


だが、さめざめ泣いているアンを、ミカエルはとうとう見つけられなかった。



「その程度で俺から逃げられると思うなよアン!」



捨て台詞を吐いたミカエルはやっと家から帰って行った。

ミカエルの帰宅と共に、アンの母親がこそっと荒れ果てた客間に顔を出す。ミカエルから見えないだけで、アンはずっと客間で膝を抱えて座っていた。

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