今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
「ヘレナに当たらないでください。しかし襲撃された件で……私も準備が甘かったとわかりました」
ヘレナがガタガタ震えて歯の根をカチカチ言わせているとジェイドがヘレナを抱き締めて隠した。
「こっちから魔王に仕掛けるのは賛成です。殿下がいれば戦力も申し分ない。魔王を釣りましょう」
「早くしろ。その女を餌に魔王を呼び出して焼き払って、一生俺の使役魔にしてやる」
保健室のベッドに座り、偉そうに足を組んだミカエルの目の下の隈が濃く、立ち上る禍々しい魔力のプレッシャーにヘレナは息ができなかった。
アンにはあんなに一途なのに、病み上がりのヘレナには一切何の配慮もない。まさに傍若無人の具現である。
(もはやミカエル様が魔王なのでは……)
冷や汗まみれのヘレナは、餌として準備されることになった。