今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
もうああやって青くなって出て行く治癒師は何人目だろう。アンは立ち上がって、ソファに座って舌打ちするミカエルの前に仁王立ちした。
「もう私の顔を治そうとするのは諦めてミカエル。私はあなたと婚約したくないから、顔に傷ができて良かったと思ってるんだから」
「それは何回も聞いた。だけど言ったはずだ。俺はあきらめないって」
「なんでそんなムダなことを……」
大ため息をつくアンの前に立ち上がったミカエルは、アンの歪んだ右頬を撫でて首を傾げる。
「好きだから」
「え?」
「お前のこと好きだからって、言ってなかったか?」
「はぁ?!」
アンは紅の猫目をぱちくりさせて、ふさふさの睫毛で風を起こしてミカエルに伝えた。びっくりしたと。
「俺、言ったつもりなの良くないな。改める」