今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
「ああ、話し忘れてごめん、ヘレナ。あの火傷の流行、嫌な噂が流れてる」
「嫌な、噂ですか?」
ジェイドとヘレナが、保健室のベッドで隣り合わせに座り、顔を見合わせた。
ヘレナがきょとんと瞳を丸くすると、ジェイドが優しく髪を撫でる。
「アン嬢とヘレナが授業に出なくなってから、たくさんの令嬢のもとに化粧品が届いたって話でね」
「化粧品、ですか?」
「その化粧品を顔に塗ってしまうと、アン嬢と同じ火傷痕がつくそうだ」
「アン様と同じ……火傷ですか?」
「そう、何人もの令嬢に被害が出て、傷物令嬢の呪い魔法のせいだ、なんて言われてる」
ヘレナが口を開けてぽかんと呆気に取られている顔も可愛くて、ジェイドは彼女の綺麗に治った頬を優しく撫でた。
「アン様はそんなことしません」
「ヘレナの言う通りだろう。でも、噂は時に事実を上回るからね」