今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
アンが傷物令嬢の呪いを振りまいた犯人に仕立て上げられてしまう可能性があると、ジェイドは示唆していた。
この学校でヘレナは平民出身というだけで隔離されて誰にも相手にしてもらえなかった。
貴族たちが集うこの校内には異常に冷たく怖いところがある。人の心に巣くう悪意がいる。
「しかも今は魔王が校内のどこかにいる。魔王出現の際に、人の隠された悪意が活性化された例は過去に何度もあるんだ」
噂は時に人を殺す。ヘレナは身が縮んだ。あんなに優しいアンが陥れられるなんて許せなかった。
「早くアン様に学校にお戻り頂いて弁明しないと……」
「そうだね。魔王がいなくなればみんな冷静になるよ。アン嬢とミカエル殿下のケンカもきっと収まる。だから、がんばろう、ヘレナ」
「はい!私、がんばります!」
ヘレナが、人のために頑張ると努力する様からジェイドは目が離せない。
恋する男は、大好きな彼女から一時だって、目が離せない。見えないなんて、気が狂う。
ジェイドは愛する彼女が見えない状態になっているミカエルに同情した。