今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
この部屋に籠っていれば断罪されることも、ミカエルとヘレナのハッピーエンド姿も見ることはない。
(乙女ゲー本編が終わったら、ゆっくり将来を考えよう。もう断罪に怯えることもないんだから)
アンがベッドに横になると、毎夜、いつも通りにミカエルが指輪を通して呼びかけてくる。
アンはその声を完全に無視していた。
指輪はミカエルの許可がないと外れないのでそのままだが、ミカエルの声は毎日ベッドで聞いていた。
「アン、顔が見たい」
「アン、お前に触れたい」
「アンの声がないと眠れない」
「アン……会いたい」