今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
客観的にこの場面を見れば、しわしわのおじいさんをボコる若者だ。
魔王と呼ばれるこの世で最も邪悪なものを、王太子が討伐する様は、どっちが悪役かまるでわからなかった。
「チッ、お前のせいで……ああ、殺したい」
アンが呪い塗れなのは大概ミカエルのせいなのだが、ミカエルは魔王に恨みつらみをぶつけてストレスを発散しようとした。
「さ、サーセン。こ、殺さないで」
ミカエルはアンに会いたくて会いたくて日に日に目を血走らせて、目の下の隈を濃くしていた。
美貌と呼ばれた顔が醜く歪んで怒りに燃える様はこの世を業火で焼き尽くしそうだった。
「俺に永劫、従順に従うと誓えば、使い魔として生かしてやるよ」
「誓いまする」
「おい、やれ」
「はい!」
ミカエルの鋭い指示で、ヘレナが訓練した聖魔法を披露する。
ジェイドが用意した魔王を捕えるための封印瓶に、ヘレナの聖魔法により、魔王は手の平サイズに収納された。
「成功ですね」
「よかったです……」