今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
へなへなとその場に座り込むヘレナを、眼鏡を上げ直したジェイドが優しく撫でた。
勝利の余韻に浸りたいところだが、総力魔法戦に疲れた様子も見せず、ミカエルはすぐにその場を後にした。
「アンに会いに行く」
魔王の封印瓶を持たされたジェイドとヘレナも、魔王に見まごう禍々しいオーラを背負ったままの王太子に付き従った。
「ミカエル様の瞳孔が開きっぱなしなんですが……アン様、魔王ミカエル様に食べられてしまうのではないでしょうか……」
「ありえるね」
ヘレナはジェイドと手を繋いで歩きながら、動悸が激しかった。ジェイドは冗談のように笑うが、ヘレナは本気で危惧していた。
だが、ヘレナに心配されるアンは、別の意味でピンチを迎えている。
(えーーあーーーこういう断罪ってあるのぉお?!)