今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
ミカエルは先程までキレてまき散らしていた魔力圧をしまって、ふっと眉を緩ませ柔和に笑った。お子様ながら、その笑みは秘宝の域だ。
「俺は、お前のことが好きだ。お前くらい俺を揺さぶる女いないからな。絶対、もう一生お前だけだ。それはわかる」
「えぇええ?!」
「俺のにしたいから、諦めない」
ミカエルは余裕な顔して、煌く笑みを讃えて可愛く笑う。あまりの可愛さにこちとら中身三十路で10歳に赤面させられてしまった。だって顔が天才のくせに、あざと可愛いを武器にして口説いてくる。最強かよ。
「その顔、可愛いな。ハマる」
アンは顔が熱くて口から言葉が出てこなかった。照れた感情が顔に全部素直に出たアンの醜い右頬を撫でて、ミカエルはご機嫌に笑みを零し続ける。
「俺がその火傷を、絶対治してやる。火傷が治ったら婚約するから、待ってろよ?」
「いや、待たないよ?」
「減らず口、可愛いだけな?」
ハハ!と快活に自信に満ちてミカエルが笑う。一瞬、慣れない恋モードで攻められて動揺したが、こちとら三十路だ。子どもの戯言!と思い直して、心を落ち着ける。
(こいつ絶対全部自分の思い通りになると思ってるな。逆にすごい。どっから来るのその自信)