今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
ミカエルは一人でペラペラ話し、アンは一人で考え込む。
(ミカエルは乙女ゲーが始まればヒロインちゃんにメロメロだから)
アンは全ての危険を予測して、結論を得た。
(ミカエルが私を好きなんて、放っとけばいいか。初恋が冷めるのは見えてる)
アン的には、乙女ゲーが始まりさえすればミカエルがアンに飽きることはわかり切っていた。
自然な恋の移り変わりにお任せして、アンは安全圏から推しを眺め倒して悦るだけだ。大丈夫、「婚約破棄どころか婚約しない」計画に支障はない。
「アンはどう思う?」
「問題ないと思う」
「だよな。アンは話早い。じゃあ、そうするけど、寂しくないか?」
ミカエルがコテンとあざとい角度でアンを右斜め下から見上げて、ニタリと笑う。
(顔が天才。あざと可愛い)
いちいち顔が天才であることを見せつけられると、その客観的事実だけはアンの胸に募った。
「寂しいわけないでしょ?」
アンは適当に返事をする。ミカエルはおしゃべり大好きで話も長いので、相槌なんて9割適当だ。