今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─


「そう言うと思った。素直に寂しいって言ってくれてもいいけど、絶対言わないとこツンツン可愛い」

「ツンツンしてない。普通に好きじゃないだけ」

「んー直球、でもそんなこと言って俺が好きだろ?」

「全く話聞かないよね」

「じゃあさっそく準備するから」


全く話をきかないミカエルはハハ!と快活に笑った。まあアンも聞いていないのでお互い様である。ミカエルはアンの右頬に挨拶のキスを残して帰って行った。


(何を準備するんだか?ってか、この頬にためらいなくキスするとか、変わってるというか、豪胆というか)


アンは一人の部屋で鏡に映った自分を遠目に見て苦々しく笑った。

自分でさえ積極的に触りたいとは思えないほど醜く焼け爛れた右頬だ。


なのに、誰よりもミカエルは、この頬に自然と触れてくる。可愛いものを愛でるように優しく撫でてキスをする。


(ま、あいつイッてるからな)


本当にアンのこと好きなんだとか、献身的だなとか、可愛いところあるなとか思ってもらえないあたり、今のところ全く脈がなかった。

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