今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
何でもそつなくいたい俺様王太子は努力しちゃったのがバレて、ちょっぴり耳先を赤くした。
「何でそこで恥ずかしがってるの?!いつも通り俺なんでもできるからーって俺様してろよ!可愛いかよ!」
耳先が赤いミカエルは、騒ぐアンの頭を撫でて爽やかな風を受けて王子様スマイルで笑ってごまかした。顔が天才。さらに俺様のくせに好きな子のために努力しちゃうなんて意外な一面を見せてきた。
「そんなことしても迷惑なだけで!ときめいたりしてやらないからな!でも努力するなんてエラいなミカエルは!」
「なんでいつも怒るんだアンは」
さすがに中身三十路のアンは、10歳の健気な努力をコケにすることなどできない。
ミカエルは努力を惜しまない男であることが露呈したが、アンの気持ちはこれっぽっちも見ない男である。
「全く素直じゃないな。まあ、そういうところが好きだけど」
アンのブロンド髪を良き彼氏のように一房掴んでキスをしたミカエルは、再びねっとり別れのキスを右頬の残してやっと出発していった。
馬車が見えなくなるまで恨みがましく睨み切ったアンは、がっくり項垂れた。
(せっかくいなくなったのに!!指輪ハメ逃げて、毎日夜通話させられるとか、ごりごり縛られてるんですけど!)
アンは勝手に初恋に溺れる王太子の粘着さに放心した。