今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
今日も魔法研究に勤しんだアンは、公爵家敷地内に放たれたベビートロールに火の玉をかましてぶっ飛ばしていた。
ベビートロールはやせ細って骨と皮だけの赤子サイズの小鬼だ。
人間の髪の毛をむしって食べるのが大好きな薄気味悪い魔法生物である。とにかく迷惑な害生物を魔法家庭教師がアンの魔法の相手として連れてきている。
「魔王にもなれそうです。アン様」
「もうほめ過ぎです先生ったら!」
魔王にもなれる!は幼い子どもが魔法を成功したときに褒めるジョークを交えた常套句である。だが、魔法家庭教師は、アンに本気でビビってる部分があった。