今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
急に大人びて、声なんて毎日聞いていたはずなのに実物のミカエルの声はアンの下腹に響く低音だった。骨格なんて全然違う。前は少年だったのに、今は鍛えられた男のものだ。
ミカエルが勝手にエスコートして引いて行く手だって硬くて、魔法の研究だけではなく武道の研鑽も怠らなかっただろうことがわかる。
(ハイスペかよ王太子!ってこいつ作中一番のハイスペだったワロターって笑えない!)
アンがひとしきり脳内で乙女ゲー作中一の美貌とハイスペを兼ね備えた男を噛みしめ終えると、やっと周りの反応を受け取ることができた。
「あの傷物令嬢が……王太子と?」
「やっと帰国なされたミカエル様があんな傷物女と」
「どうして??」
チクチクと同級生の令嬢たちの嫉妬が向けられていた。