今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
しゅんと眉を下げてしょんぼりするアンを見慣れないミカエルは、心臓を鷲掴みにされた。
映像でも音声でもない生のアンは破壊力抜群だ。もじもじする指先やきょろきょろする紅の猫目、白い頬に差す赤に、優しい香り。全部刺激的である。
「知ってたけど、お前可愛いな」
「なんで今その話になる?!」
「俺はそれしか考えてない」
「もっと!こう!王太子でしょ?!いろいろあるじゃん周りの反応とか体裁とか!」
「全部どうでもいいだろ」
「私はどうでも良くない!いろいろ言われるんだからこの顔じゃ、隣にいられないでしょ!」
ミカエルの顔色が変わって、アンに長い足で一歩二歩と大きく近づいた。ミカエルはためらいなくアンの右頬を撫でて、顔を寄せてくる。
あまりに大人になった顔と、大きな体躯にアンは後ずさりたかったが、手首を捕られて動けない。
「俺がその火傷を治す。今夜お前の部屋に行くから、待ってろ。顔のせいで隣に立てないなんて二度と言えなくしてやる」