今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
アンは再び立ち上がって、部屋をウロウロそわそわし始める。ミカエルはその仕草を恥じらいと取って笑った。
ミカエルがソファから優雅に立ち上がり、アンに迫るとアンは一歩一歩壁際に追いつめられた。
「逃げるな、アン」
背の高いミカエルと壁に挟まれて逃げ場がなくなると、ミカエルがアンの醜い右頬の前に大きな手のひらを広げる。アンは覚悟を決めてミカエルの天才な顔を潤んだ猫目で見上げた。
「長かった。何年、お前を我慢したと思う?」
「知らない」
「知ってるくせに。俺を焦らすのが好きだなお前は」
アンがツンツンするほどに、ミカエルは楽しくて舞いあがる。この思い通りにいかない女を自分のものにするために、このすべてを兼ね備えた人間が5年も一心不乱に努力してきたのだ。
この女の火傷を治し、己のものにする瞬間に舌なめずりする。
(うわわわーーマジで治ったらどうしよう)