今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
ミカエルの長い足がアンの行く手を塞ぎ、輝きの消えた暗い碧眼に睨みつけられる。アンは元から白い肌をさらに蒼白に仕上げる。冷や汗が背中を伝った。
「何した?」
ミカエルの圧に耐えかねてアンは、視線をきょろきょろと彷徨わせながらぼそぼそと口を開いた。
「呪い魔法を少々嗜んで……」
「治癒魔法の拒絶?いや、右頬だけ時間を止めたな?!」
「さすが賢い。すぐバレる……」
もっとこの呪い魔法は何だ!?で引っ張れるかと思ったのにすぐネタは割れてしまった。留学してまで魔法研究してきたミカエルは、魔法に対する知識も実力も凄腕だ。
アンは自らに呪い魔法をかけて、右頬の時間自体を止めた。その結果、治癒の拒絶に成功した。
(ミカエルがいくら治癒魔法の先駆者になっても、呪い魔法を解かなくちゃ右頬は治らない!)