今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
怒り狂っているうちは子どもの癇癪でハイハイと見過ごせるのだが、しょんもりと眉尻が下がると妙にアンの目が惹かれた。
(ミカエル5年間もいっぱい頑張ってきたんだもんね、ちょっと鬼畜だったかな、あ、ごめ、泣かないで)
俺様街道ぶっちぎっている彼がしゅんと弱い顔を見せると下腹がキュンに持っていかれてしまう。アンも眉尻を下げておろおろ口元に手を当てていると、ミカエルが細かく肩を震わせ始めた。
「ふ……アッハハハハ!!」
「何、急に?!情緒ぶっ壊れた?!」
急に片手で顔を押さえて笑い出したミカエルに、アンはみぞおちが痛くなった。5年間の努力を踏みにじってあまりに可哀相なことをしたものだから、どこか狂ってしまったのかもしれない。
「さすが、俺の惚れた女だ。簡単にはいかないな」
ミカエルは片眉を高く上げて、片眉は下げて、苦渋と楽しさをない交ぜにして笑った。大人と子どもの顔が混じった見たことのない表情にアンの下腹と腰がゾクッと刺激された。
「俺を舐めるなよ?」