今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
この呪いの解き方は他の文献にはないのだ。魔法家庭教師は泣いたが、金で黙らせた。そうして安全を得たアンはハッピースクールライフを楽しみ始めた。
傷物令嬢ながら、王太子に気に入られていると認識されてしまい、同級生、先輩方にいたるまでアンは嫌煙された。
(そんなのは予定通り、ハハハハ!)
ぼっちの生活は予定していたものだったので何の問題もなく、アンは推し事に勤しんだ。脳内三十路もとうに越えてぼっちが怖いなんていう繊細な心はもはやない。
ヘレナとジェイド先生の恋の行方を見守るのに忙しいのだ。
アンが楽しみながら身につけたストーカー魔法、いや、透明魔法を駆使して保健室の前に潜んでいた。
「ふっ、ふふふふ」
アンは時折、耐えきれず萌笑いを漏らした。いくら透明でも声が出たら意味がない。透明なアンが漏らす声に振り返る女生徒が幾人かいたが、アンは出歯亀に忙しくて気がつかなかった。
一人の女生徒などは、怪しい場所を魔法道具で撮影したりしていたが、集中するアンはそれにさえ気づかない。