今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
校舎ですれ違うくらい問題はないのだが、透明で移動していたなんてやましいことがあるのがバレバレである。この粘着質なミカエルには推し活なんて見られたくないし、詰められなくない。
ミカエルはさっさとどこかに行けばいいのに、なぜか腰に吊った懐中時計を確認する。今、時間確認しなくてもいいじゃないか。
「いるな」
(何が?!)
アンは口をつぐんで周りをきょろきょろする。
お化けでもいるのかと思うくらいはっきり「いる」と告げられた。ミカエルがすっと前に長い手を差し出して、何事か呟くと、アンの魔法が消されてしまった。
「あ」
透明魔法を破られて、制服姿を露わにされたアンは口をぱっくり開ける。アンの無防備な顔を見て、ミカエルは爽やかに微笑んだ。
「アン、見ーつけた」
「ちょ、怖い怖いこわいこわいなんでわかったの?!」
「声出しただろ?」
「出したけど、あれ?気のせいだったかなで済む程度だったでしょ?!」
「俺がアンを見逃すわけないだろ。また保健室か。ジェイドはお前を見てないって言ってるぞ?毎日ここで何してる」