今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
アンがミカエルに透明魔法を見破った方法を問いただしていたところだが、なぜかもうアンが罪を問われている。
「ミカエルに言うことじゃない」
アンは腕を組んでそっぽ向いた。こうなんでもバレてはやってられない。機嫌も悪くなる。
「ふーん。俺に言えないやましいことなんだな」
「すぐ言い当てるのやめてよ!」
ミカエルはアンの至近距離に詰め寄って、くるんと癖のあるブロンドの髪を一房指に巻き付けて碧眼から光を消した。
「目的はジェイドか?」
「ぐっ」
バレてる!とアンの紅の猫目が素直に感情を語るのをミカエルは見逃さない。ミカエルが一歩一歩詰め寄れば、アンはまた一歩一歩後退して壁に追いつめられる。
「俺の婚約者になるのは、自分から火傷をおってまで頑なに拒むくせに、ジェイドには毎日会いに来るのか?」
ミカエルの声がいつもより闇を愛でて低くなり、アンの背筋を冷たくする。どうして恋人でも婚約者でもないのに、こんなに悪いことをしている気分にさせられるのだろう。ただの推し活なのに。
「あ、いやその、それはせっかくだし、ジェイド先生かっこいいから見たいなーみたいな?」