今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─


ミカエルの額にくっきり青筋が浮かぶ。アンの口から初めてかっこいいなんていう言葉が出たのに、それが他人に向いていた。ミカエルは嫉妬の業火で血管が焼き切れそうだった。

こめかみの痙攣が止まらないミカエルは低い声を出す。


「そういうことするなら、俺にも考えがある」

「な、なに……?」


ミカエルは壁を背にするアンの顔の横に、どんと手の平の側面をこぶしで叩きつける。アンがヒッと声を上げるのを押さえて紅の猫目を潤ませると、ニヤリと嬉しそうに笑った。


「アンと俺の邪魔をする奴は、消す」

「け、消す?!」


アンは王太子ミカエルの権力で、ただの教師ジェイドを合法的に消す方法をいくつも想像してしまった。

転勤させる、可能。

一応伯爵の爵位を持つジェイドからの爵位はく奪、可能。

速やかに事故に見せかけて抹殺、可能だ!


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