今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─


アンは廊下の端で膝を抱えてしゃがみこんでいた。



「やめてー!まとめられるともっと胸に痛いー!」

「アンにそういう趣味があったとは初耳だが、俺はアンが他の男を見て喜んでるのはつまらない」

「ミカエルは関係ないでしょ!自白魔法かけるなんてひどい!」



廊下の端っこにしゃがみこんだアンは、膝を抱えたままミカエルを非難する。だが、ミカエルはふふんと笑うだけだ。ミカエルが長い足を折りたたんで、アンの隣に同じようにしゃがみこんだ。



「ジェイド、消す?」

「ダメダメダメダメ絶対やめて」

「じゃあ、キスして」

「はぁ?!」


アンが思わずミカエルを振り向くと、鼻がぶつかりそうな距離にミカエルが笑っている。


「ほら、アン。可愛くおねだりしてみろよ?おねだりしないとジェイドが消えるぞ?」


悪戯顔でニタニタ嬉しそうに、ミカエルがアンに発破をかける。アンは唇をむぐむぐ言わせて言葉を飲み込んだ。こんなの完全に脅しだ。


でも推しの恋愛を守るために、背に腹は代えられない。推しの平穏を守るのはモブの役目だ。
< 68 / 214 >

この作品をシェア

pagetop