今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
だってこれからヘレナがめちゃくちゃマズい手作りお昼ご飯イベントが起こるんだから。メシマズを何とも言えない顔して食べたジェイド先生がお腹壊して寝込んで看病までがイベントなんだから。
それを見逃して生きてなど行けない。いや、生きてる意味がなくなる。
「わかった。キスする。キスしたら、ジェイド先生を見逃してよ?」
アンはきゅっと覚悟を決めて唇を引き締めて、この俺様暴君を紅の猫目で見つめた。
口にしろとは言われなかった。ちゅっと、いつもミカエルがする右頬の挨拶みたいに軽くしてしまえばいい。
「ミカエルは目、瞑って」
「イヤ」
「なんで」
「お前が俺にどんな顔でキスするか、全部見たいから」
にこにこのゴキゲンをたっぷり顔に含ませて、悪戯な笑みを浮かべるミカエルにアンは顔が熱くなる。
(何この羞恥プレイ!)
アンが恥ずかしさに目に涙を浮かべて猫目を赤く染める。視線を彷徨わせてもじもじを繰り返す。
「…………」