今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
これから婚約者になるはずの少女が火搔き棒とにらめっこする現場に、首をかしげるミカエルは可愛かった。
きっと実物のアンの推しもカッコ可愛いに違いない。アンはそれをも確信した。
アンはミカエルから火搔き棒に視線を戻す。手が震えた。
(推しに殺されるならまだしも!まだしもだよ!?
私、俺様キャラって好きじゃない!
推しでもないミカエルに断罪されるわけにはいかない!)
乙女ゲー「君と魔王とLOVEしてる」でのアンの推しは優しい年上キャラだ。前世からアンは俺様キャラのミカエルにはどうもときめかない。
(私は生きて、安息な場所から、推しを存分に眺める!)
ミカエルの顔を見たことによって、アンの覚悟は決まった。
(痛いけど痛いけど痛いけど!死ぬよりは絶対マシだから!!)
アンは自分の顔に迫った熱々の鉄の塊を、己の頬にぎゅっと押し付ける。
肉が、焼けた。
「キャアアアアア!!」
「は?」