今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
アンは無心でサンドイッチを咀嚼しながら紅の猫目に魔力を集中させる。
この魔力が宿ったオタク猫目なら、ジェイドがヘレナの頭を撫でて微笑んでいるこの光景を脳内に録画できるのではないだろうかと考えて真剣に目に魔力を集中させていた。
猫目でスローモーションのように繊細な動きを捕えていると、ジェイドが黒髪を揺らして、眼鏡を上げ直してやっとやっと一瞬だけアンに振り向いた。
「彼女のこと、よろしく頼むよ、アン嬢?」
(推しの笑顔たまらなぁあああい!守りたいその笑顔ぉお!)