今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
にこりと半面が焼けた顔で笑ったアンは意識を失い、その場に崩れ落ちた。
(なんだよあの女……頭おかしいのか?なんでそんなことするんだよ?)
あまりの惨状にミカエルは唖然とし、女の生き様に息も止まる。
「キャアア!アンちゃん!どうしてこんなことに?!」
アンの叫び声に集まったアンの両親や大人たちが、部屋になだれ込んで来た。
「早く!早く治癒師を呼べ!!」
父親が気を失ったアンを抱き上げて連れて行ってしまう。
部屋にたった一人取り残されたミカエルは、胸元の服をぎゅうと手で握り締めた。胸は、かつてないほどにドキドキと高鳴り早鐘を打つ。あの女を見て、ミカエルの全身の血が湧き躍り騒いだ。
(俺と婚約したくないから、自分で顔を焼いた?)
アンの捨て台詞で、ミカエルの思い通りになりたくなかったことは伝わった。
ミカエルは身分、美麗な容姿、魔法の才能、何を取っても非の打ち所がないと自他共に認める存在だ。
(まさか、この俺が気に入らないだけで、女の人生で最大の武器になる顔をぶっ潰した?)