今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─
顔の使い方ひとつ、言葉の使い方ひとつでアンにぎゃあぎゃあ怒られずに、望む結果を手に入れた。
ミカエルはすぐにアンの胸に飛び込んだ。アンに抱き締めてもらいたいのだが、背丈が違い過ぎる。上背のあるミカエルがアンの胸に収まるのは難しかった。
「ふっアハハハハ!アンの両腕に俺が収まるとか無理じゃないかこれ?」
「ね、寝転んでたらできるかも?」
「あ、今、俺のことベッドに誘った?」
「バッカじゃない!もう機嫌直ったでしょ!」
「たしかに、笑った俺の負けだな」
アンの胸に無理やり顔を押し付けると腰を大概曲げることになり、ミカエルは大層不格好であった。
それが可笑しくて大笑いして、アンに背中を撫でられてミカエルは大いに笑った。
「チッ、傷物令嬢のくせに殿下にベタベタと」
人が寄り付かないぼっち用の中庭とはいえ、人が来ないわけではない。
ミカエルのご機嫌取りには成功したアンであったが、敵意満々のリリア嬢の視線が刺さっていることには気がつかなかった。