澄ましたメイドのご主人様。

お父さんの不始末。

「す，すまない……母さん，花蓮《かれん》」



本当は気が小さいくせに，昔から私の前では私のためにと厳格に見せてきた父が，いつも通りだった朝に，そんなことを言った。

コーヒーにメガネ，大胆な座り方。

普段はそんな父が，土下座の勢いで弱りきった顔。



「何がすまないのか，先に説明して貰ってもいい？」



ヒヤリと刺す様な声が，自分の喉を震わせる。

感情まで冷えているつもりは無いけれど，昔から声も表情も，あまり温度を乗せはしない。

それで，何があったの？

ただ知らないことにはどうにもならないから，私は首をかしげた。

ヒエッと，父のメガネがズレる。



「と，父さんな，か，株を～内緒でやってたんだが……」



まさか……



「いくら，失くしたの？」



私がじっとお父さんを見つめると，お母さんも困ったようにあなたとお父さんを呼んだ。

娘の私に話すよりはましだと思ったのか，お母さんの耳を寄せてこそこそと耳打ちをする。



「……うん……はあ？！！？」



思ったより，大事みたいだ。