澄ましたメイドのご主人様。

返事を待ち，良く通るその声を合図に私は入室する。

思ったより，爽やかな声。

いつかの高校面接を思わせる空気に，扉を閉めてから当主の旦那様と向き合った。



「……初めまして。五十嵐花蓮と申します。父に仕事のお話しがあったとの事で，まだ有効であるかとお尋ねしたく参りました」



どこまで固くするべきかと，一先ず思い付く中で1番丁寧に話してみる。

横に揃えるよりは，前で重ねた方が綺麗に見えるだろうかと。

思考を散らばせながら私は礼をした。

浅すぎは論外で，深すぎてもきっと不恰好。

思ったより意識することが多いなと，私は無駄に揺れないように身体を止める。



「いやはや，私の方から声をかけたのに，花蓮ちゃんの方に頭を下げさせてしまうなんて……ごめんね，話しは聞いているよ。来てくれてありがとう」