澄ましたメイドのご主人様。


フレンドリーな人。

言われるまま顔を上げ,私はその人をゆっくりと観察した。

普段からなのか,仕事があるのかあったのか。

シワ1つないスーツ。

髪も固められたその顔には,穏和な表情が乗っている。

少しだけ,私は伝わらない程度に力を抜いた。



「仕事とは言え,ただのお願い程度に聞いて貰えたらいい」



これまた高そうな茶色の腰かけ。

促されて座ると,やはりストレスのない柔らかさ。



「はい。今日はそのお話しについて伺いに来ました」

「私の息子なのだが……花蓮ちゃんと同い年でね。けれど少し……私達家族の環境のせいで,拗らせてしまったようなんだ」


途中で,そんなに残念な感じなのですかと問いたくなりながら聞く。

思ったより,旦那様の中では深刻な問題のようだった。

拗らせるとは具体的にどういうことなのだろう。

環境のせいと言うが,そもそも私とは前提的に違う話なので,それだけで全てを理解するのは無理な話である。

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